溶接作業にかかわっている方のなかには、溶接ヒュームという言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
溶接作業では身近な溶接ヒュームですが、実は健康被害を引き起こす可能性があることをご存じでしょうか?

そこで本記事では、溶接ヒュームがどのようなものかの概要や、どんな健康被害を引き起こすのかということを詳しく紹介します。
溶接ヒュームを詳しく知って健康被害を防ぎたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。

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溶接ヒュームとは

溶接ヒュームとは、金属をつなぎ合わせる作業であるアーク溶接をする際に発生する粒子のことです。
溶接作業を行ったときに溶けた金属は、白い煙のような蒸気になったあと冷やされて粒子になります。
この冷やされた微細の粒子が、溶接ヒュームです。

溶接ヒュームは中毒性のある有害物質でもあるため、一度体内に吸い込んでしまうと排出できずに体内に蓄積されます。
体内に溶接ヒュームが蓄積されると、健康被害を引き起こす可能性があるため、特定化学物質の第2種に分類されています。

溶接ヒュームがどのような物質なのかを詳しく知っておくことで、従業員の健康被害を防ぐことにもつながるでしょう。

溶接ヒュームによって引き起こされる可能性がある健康被害

特定化学物質として認定されている溶接ヒュームは、主に「肺がん」「神経障害」などの健康被害を引き起こす可能性があるといわれています。
しかし、まだ具体的な原因が特定できているわけではないため、今後の研究で詳しい原因が判明するかもしれません。
厚生労働省が公開した、明らかになっている溶接ヒュームの現在の有害性は以下のとおりです。

主な有害性(発がん性、その他の有害性) 性状
発がん性:国際がん研究機関(IARC)グループ1

ヒトに対する発がん性

 

その他 :溶接ヒュームに含まれる酸化マンガン(MnO)

について神経機能障害

三酸化二マンガン(Mn₂O₃)について神経機能障害、呼吸器系障害

溶接により生じた蒸気が空気中で凝固した固体の粒子

(粒径0.11㎛程度)

引用:厚生労働省「屋外溶接ヒューム パンフレット」

上記の有害性は、金属アーク等溶接等作業を屋外で行う方や、作業のたびに異なる屋内作業場で行う方向けに作られています。

溶接ヒュームを体内に取り入れると、がんになりやすいだけではなく神経機能障害や呼吸器系障害などの健康被害になる可能性があるため、注意しましょう。

溶接ヒュームによって起こる健康被害を防ぐために行える対策

溶接ヒュームに健康被害を及ぼす可能性があると判明してから、厚生労働省は「労働安全衛生法施行令」「特定化学物質障害予防規則(特化則)」の法改正を行いました。
これらの法改正は令和3年4月1日に施工・適用され、溶接ヒュームの作業を行うにあたり定められた規則がいくつかあります。

少しでも溶接ヒュームによる健康被害のリスクを抑えられるように、法改正された内容を確認して対策を行いましょう。
ここからは、法改正された内容に対して、金属アーク溶接等作業を行う現場での対策を紹介します。

対策①空間全体の換気を行う

主に屋内作業場で溶接作業を行う方は、溶接ヒュームを体内に取り込んでしまう可能性が高いため、空間全体の換気を適切に行わなければなりません。

空間全体の換気には「全体換気装置」という装置が推奨されており、室内に発生した溶接ヒュームを室外に排出するという働きがあります。
全体換気装置は、故障や破損がないかの定期的な点検を、特定化学物質作業主任者が行います。
全体換気装置の点検は1か月に1回のペースを目安にして、点検をしていない期間が1か月を超えないように注意しましょう。

全体換気装置による空間全体の換気を行って、溶接ヒュームを適切に減らすことが大切です。

対策②濃度の測定を行い、適切な防護マスクを使用する

これまで金属アーク溶接等作業を行う場合に使われていたマスクは、粒子捕集効率が95%以上である防じんマスクでした。
しかし、令和4年4月1日以降に関しては、溶接ヒュームの濃度を測定したうえで、測定結果に適したマスクを着用しなければなりません。

溶接ヒュームの濃度の基準値は0.05mg/㎥となっているため、測定した数値が0.05mg/㎥以上の場合は濃度を下げる作業が必要です。
また、適切な防護マスクを選ぶために、測定した数値を使って自社の要求防護係数を計算しましょう。
要求防護係数は「測定後の数値÷0.05」で求められます。

防護マスクは、求めた要求防護係数よりも大きな指定防護係数であるものを選びましょう。

対策③フィットテストを1年に1回は実施する

フィットテストとは、従業員が防護マスクを正しく装着できているかどうかの確認を目的としたテストです。
主に、新しい防護マスクを導入したときや新入社員が入社したとき、体重の増減が大幅にあったときなどに行うと効果的です。

また、最初は保護力が高かった防護マスクも、経年劣化や故障により保護力が低下している可能性があります。
定期的に防護マスクの保護力を確認するために、フィットテストは1年に1回は必ず実施しなければなりません。

フィットテストの結果は、3年間は必ず保存しなければならないため、結果を記載したデータや紙を紛失しないように気をつけましょう。

法改正によって定められた溶接ヒュームの規則とは

本記事では、溶接ヒュームについてご紹介しましたが、法改正によってどんな規則が出来たのでしょうか?
別記事の「法改正によって定められた溶接ヒュームの規則内容とは?」にて詳しくご紹介しております。ぜひご覧ください。

溶接ヒュームとは体内に取り込むと健康被害を及ぼす特定化学物質の1つ

いかがでしょうか?

溶接ヒュームとは、金属をつなぎ合わせる作業であるアーク溶接を行う際に発生する粒子のことで、健康被害を及ぼす可能性があるといわれている特定化学物質です。

健康被害の対策としては、空間全体の換気を行って溶接ヒュームの濃度を下げることや、測定した濃度に適した防護マスクをつけることなどが挙げられます。
また、1年に1回のペースでフィットテストを行い、正しく防護マスクが装着できているか確認することも大切な対策です。

溶接ヒュームによる健康被害の対策としては、作業中に適度に休憩をとることも大切です。
KOVAKOは工場内に設置できる密閉性の高い休憩室なので、新たに休憩室の導入を場合はぜひご相談ください。

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